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2013

11/19

Tue.

2013関西大学Aリーグ関西大学戦(11月16日) 

■関西大学Aリーグ  
11月16日(土)関西大学戦
■西京極競技場
■天候: 晴れ
■風: ほとんど影響なし
■結果:  D41-14K

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関大を拝見するのは今季初でした。ただ、前週の鶴見緑地の関大-大体大戦ビデオがネットに落っこちておりまして、それを拝見するといかにも関大ディフェンスが緩いものですから、「このディフェンスなら10トライは固い。流れ次第では同志社ファン大喜びのゲームもあり得るな」なんて事前に思っていました。もちろん、関大ディフェンスがグラウンド中盤でも緩いこと。そして、同志社オフェンスが京産大戦同様スピーディーであることが前提です。

トライシーンは要するに、概ね「ディフェンスが崩れたシーン集」ですね。そこを読み違えたのが私の甘さです。同志社の闘いを見た今だから言えることですが、大体大のFW攻撃が関大ディフェンスに内側の守りを意識させ、その布石効果で気持ち弱くなった外側を体大BKが崩していたんだろなと思います。考えてみればディフェンス技術が年々進歩し、関西Aリーグ参加校でもそれが標準装備となった近年です。ゆるゆるのディフェンスで、関大がAリーグに居られるはずありませんね。そこを考えるべきでした。京産大戦の同志社トライ集を呑み過ぎて、少なからず酩酊状態でした。


柴田君の名前がどこにもなく、復活田淵君がいきなりスターターな当日配布のメンバー表にオッと思いました。同志社NO.1のタックル回数を誇る選手がいないことに一抹の不安を覚えると同時に、冨田君+田淵君、末永君、西林君のバックローです。関大を近場から縦に崩す意思表示やなと思いました。

酔っぱらいにとっての関大戦前半は、冷たい水をぶっ掛けられて目をパチクリさせられる展開でした。酔っぱらいですから「誤算」と言える立派なものではないんですが、私にとっての「聞いてないよ~」の第一は関大ディフェンスが出足鋭く、すぐに立ってラインを埋め、構築する意識が高かったことです。そして、さらに「聞いてないよ~」の第二は、同志社が展開、集散スピードで関大に負けていたことです。特にFWは動けていない印象を受けました。突破系FWが執拗に近場を突いて関大ディフェンスを集めるわけでもなく、動けていないのに同志社展開スタイルの形だけをなぞったあげく、関大ディフェンスに絡め取られることの繰り返しでした。

「動けてないな~」は当然ディフェンスにも影響しますね。DSN偵察隊長のレポに「関大は横に強い」とあった通り、関大の速いライン攻撃に同志社の大外が薄くなる瞬間が何度もありました。「ディフェンスは1ヶ月前に戻ったみたい」と思い、実際仲間内ではそう口にしました。関大だから1トライで済みましたが、関東上位にお出まし願うまでもなく、留学生を擁する関東中位との対戦を想像してもお尻の辺りがこそばゆいというか、正直心もとないです。


翌日早起きして、天理-関学戦のビデオを流し見しました。関西リーグは総じてモチベーションが安定しませんね。同じチームであまりにも出来不出来に差が見られます。疲れの出る時期なのかも知れませんが、上位に対するモチベーションと下位に対するモチベーションに差があり、それに左右されていると思うのがすんなり来ます。

対抗戦上位であっても学生ですから同じ傾向はあるはずですが、関西リーグはその度合いがより大きいような気がします。今年の場合は特にそうですね。リーグ参加校すべてが強化途上でして、まだまだ出たとこ勝負的な戦場なのでしょう。精神的に安定し、常に自分のラグビーを出し切るチーム同士の死闘を早く見たいと思います。2010年の関学、2011-2012年の天理は安定した力を見せました。ところが、惜しいことに概ね関西は常に1強状態でして、その力も長く継続しません。より多くの安定した強豪チームが関西の覇権を争う。関西が関東と肩を並べるのも、まずそこを越えることが肝要かも知れません。


後半早々に関大にしてやられた時は目の前の光景に「前半同様、動けてないな~」を感じ、正直どうなることかと思いました。しかし、その後は同志社FWが近場近場で縦を突き、ゲーム・コントロールを関大から奪い取りました。この修正能力は本当に良かったと思います。

同志社大学ラグビー部公式サイト
http://www.doshisha-rugby.com/contents/results/more.html?unique=Mzg1

田淵君、山田君、末永君、西林君、秋山君。記録によると後半のトライはすべてFWによるものです。この辺りの判断はハーフタイムの山神さんからの指示でしょうか。それとも、秋山君を真ん中に、メンバーの冷静な分析によるものでしょうか。それとも、指導陣+選手、総じての判断でしょうか。興味深いですね。

興味深いというか、面白いという意味では楽屋ネタになりますが、FWが近場を突き始めて後半最初のトライを上げた時、その少し前に輪島さんが「縦突いたら面白い」的なことを仰っていましたので、「まるで輪島さんの声が聴こえたみたい」と申しましたら、「(関大の弱点が)ミエミエなんで」と仰っていました。余談をお許し下さい。


ここ数年の同志社は前提に同志社展開スタイルがあります。ですから、この後半に見せたFWの姿はあまり記憶がありません。「へえ~、こんなんもできるんや」が素直な感想ですね。同志社展開スタイルの生命線であるスピードを出せない時の脆さを見せたのが前半、そんな時でも打開する引き出しを持っていることを見せた後半、この日の関大戦はそんなゲームでした。

前半、冷水をぶっ掛けられて酔いが覚めた酔っぱらいでしたが、後半の30分間で別の酒を振る舞われて早くも酔っぱらい、ノーサイドの笛が競技場に響くのがいかにも惜しそうで、もうちょっとゲームを見たそうにしていました。執拗に内側を意識させられ、少し消耗した関大ディフェンスです。同志社展開スタイルがそのディフェンスにどんな効果を発揮するのか。そこを見たかったんでしょうね。いつでもマスターに「もう一杯」をねだる酔っぱらいですね。

研究対応能力のファインプレーで関大が前半を取り、修正対応能力のファインプレーで同志社が後半を取った。酔い覚めの頭でこの日を振り返ると、前後半を両者で分け合う面白いゲームでした。両者に感謝を、特に関大には敬意を表したいと思います。


完全学生主導が長く続いた同志社では常に引き出し全開の、言葉が乱暴ですが懐の狭いラグビーが特徴だったように思います。その分、相手に研究されやすく、通用すればメッチャ強いですが、抑えられれば他に引き出しがないため手もなく苦杯を舐める。こんなイメージです。以前の同志社であれば、後半もスピードのないまま同志社展開スタイルのゴリ押しを続け、後半の後半、パフォーマンスが落ちたところで関大に足元を掬われる、こんなゲームも十分にあり得たでしょうね。そういう意味では今季のチーム。ひとつの戦い方にこだわらず、状況に合わせて相手の弱点を突く、それもあまり記憶にない突き方で崩すという懐の深さを見せました。


これから同志社は大学選手権を闘います。その懐の引き出しにあるものが、全国レベルでどこまで通用するかは誰にも分かりません。関大戦前半の40分は関大のファインプレーですが、視点を変えると同志社のロスと見ることもできます。プール戦とはいえ、国立を考えればサドンデス覚悟の3戦です。勝ち残るためには絶対にロスできない前半40分と言えるでしょう。

簡単にスコアできないプレッシャー下で、同志社展開スタイルをどのように効果的に発揮させるのか。相手の分析、特に弱い部分の分析が重要になりそうですね。同志社展開スタイルを独りよがりにぶつけるのではなく、後半に迎える本当の勝負の時間帯を見据えて、そこに至る、そこを制する過程を合わせて楽しんでください。

大阪体育大学戦も大学選手権に出場する可能性があるそうです。ということは、次戦から選手権が始まると考えても罰は当たらないんじゃないでしょうか。DSN偵察隊長によると体大は縦に強く、横に弱いとか。前半から同志社は、体大相手にどうゲームをコントロールするんでしょうか。体大はそこをどう対応してくるんでしょうか。

京産大戦のように一発で崩すのは確かに盛り上がりますが、相手の弱いところにじっくり布石を打ちつつ、その効果が表れたところで一気に崩すのもまた格好いいですね。今年の同志社は選択肢が複数あるように見えます。そこを体大相手にどう調整し、どう繰り出すか。そこも大きな楽しみのひとつになりそうです。

メッサ、楽しみやん♪


余談の追加です。
京産大戦と関大戦のここ2戦、観客席からのレフェリングへの批判やら注文やら恫喝やらに辟易しています。私らも常に大人しいわけではないので、偉そうに言うつもりはありません。一つ言うも百言うも一蓮托生とお思いなら仕方ありませんが、のべつ幕なしだとさすがに興が削がれます。

ゲームに集中したい方が絶対おられるはずです。そして、大学選手権が始まります。せめて程度をわきまえてやりませんか。


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category: 同志社ラグビー

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2013

11/11

Mon.

2013関西大学Aリーグ京都産業大学戦(11月9日) 

■関西大学Aリーグ  
11月9日(土)京都産業大学戦
■天理親里競技場
■天候: 晴れ
■風: 影響なし
■結果:  D49-15K

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京産大は開幕戦の宝ヶ池で関学を30-19で制しました。FWが前半からよく機動し、グラウンドの横の広さよりも縦の深さを意識した攻撃で、積極的にボールを動かしていました。関学ディフェンスの鋭い出足にスペースをつぶされ、前半はほとんどラインブレイクできませんでしたが、それでも愚直さを感じさせるほどに機動力でボールを動かし続けていました。

後半は同じ攻め方に加えて、タッチキックで関学を自陣に封じ込めるクレバーなゲームコントロールも見せました。そして、関学ディフェンスのパフォーマンスが落ち始めるや、FWの後ろから湧いて出るイメージのBKがラインブレイクを始め、後半の逆転勝利となりました。

一方、ディフェンスではやはり機動力あるFWが健闘し、関学FWを前に出させませんでした。当時の関学はそこからの打開力に欠けていたと思います。京産大の1次ディフェンスが関学FWの1次攻撃に勝り、勢いを出せない関学BKのラン攻撃も京産大BKに封じられた印象でした。

10月27日の立命戦では京産大は5-31で完敗しました。立命FWの縦の圧力に人数をかけさせられ、数的不利な状況を立命BKに内側をスピードで抜かれたように思います。1次攻撃で圧力を受けると2次、3次と進むにつれてディフェンス・ラインが短くなる、京産大ディフェンスのの致命的な弱点が露呈したかのようなゲームでした。


試合前、同志社がボールを動かせさえすればトライは取れると思いました。ただ、天理戦から関学戦の同志社は意識の重心がディフェンスにあったように感じましたので、同じ様な展開になると京産大ディフェンスの出足にFWやCTBが絡まれ、接戦から苦戦もあり得るとも思いました。

相手の出足を止めるため渡辺君の裏キックの精度に期待をかけたり、当然それへの京産大BKの備えがあるでしょうから「チッ!向こうの思う壺かよ」と思ったり、自分の想像力の範囲で想像しました。この辺りが実際にゲームを見るまでの、観戦者の楽しみですね。


京産大戦。実際にゲームが始まると上記の想像シーンは皆無でして、すぐに過去の妄想に変わりました。この日の同志社は間違いなくオフェンシブで、FWがブレイクダウン、集散ともにスピードで上回り、球出しの早さ、パスの速さで作った穴を12番木村君、13番林君のCTB陣がライン・ブレイク。最後は京産大のディフェンス・ラインが目に見えて短い状況を生んでトライを重ねました。

前半の5トライは同志社が意図した攻撃で取り切った、同志社展開スタイルを絵に描いたようなトライばかりでした。渡辺君の裏キック等が必要となる追い込まれ状況を、展開スピードの王道によって木っ端微塵に粉砕してくれたということです。

本来はもう少し鋭く出れるはずの京産大ディフェンスが完全に受けてしまい、分かっていても前に出れないパニック状況に陥りました。そして、さらに同志社は前半の40数分間、京産大に修正が効かない状況を与え続けました。自分たちの弱点は彼らが一番よく分かっているはずですから、そこを徹底して突かれる状況は京産大にとってメンタル的にキツかったかもと想像します。

余談ですがこの試合、前半の京産大はゴール前のFW攻撃にこだわりました。それが功を奏して先制トライをスコアできたからでしょうか。ただ、京産大がボールを動かすと、同志社ディフェンスがやや不安定になる瞬間はありましたので、もっとそこにこだわってほしかったです。確かに立命相手に通用しなかったダメージはあると思います。でも、京産大には過去に戻らず、関学戦で成功したように、めげずにボールを動かし続けてほしいです。もし、それでリズムが出れば、ディフェンスにも良い影響を与えると思います。


この日の同志社の攻撃で高く評価したいのが、後半2つのトライですね。ともに攻守の切り替えから奪ったトライでして、ここまでの同志社Aのゲームで少し弱かった部分です。1つ目は前半4分、同志社陣22m内の京産大の攻撃中に13番林君がボールを奪い、そこからの左右の展開から14番松井君がキック、それを忠実に追った7番末永君がゴール前で再び松井君にトスしてトライという素晴らしいものでした。2つ目は後半27分、同志社のゴール前スクラムから京産大が良いターンオーバーをして展開、そこでできたラックからの球出しで10番渡邊君がハーフにプレッシャーを掛け、そのファインプレーのこぼれ球を林君が拾って縦を突き、フォローした渡邊君からのパスを20番清水君が中央に回りこんでトライしたものです。

前半のトライは同志社の形で取った見事なトライですが、これらは相手ディフェンスとの兼ね合いがありますので、レベルの高い相手だとそう簡単には取らせてくれません。それでも同志社の場合は強い相手でも2つ、3つ取ってくれそうな可能性を感じます。でも、やはりポイントは攻守の切り替えの部分ですね。相手に生まれる一瞬の隙をいかに鋭く、落ち着いてチャンスに拡げられるか。今後、さらに磨いていただきたい部分です。

関西リーグは残すところ、関大戦と大阪体大戦の2戦となりました。9日の鶴見緑地の関大-体大戦を観戦したDSN偵察隊長のお話では、ザックリとしたイメージが「縦に強く横に弱い体大、横に強く縦に弱い関大」だったそうです。カラーが異なるチームとの対戦が続きそうです。同志社がどう調整してどこから彼らを崩すか、とても興味深いですね。

今季のチームはこれからさらによくなると思っています。ただし、関東方面との対戦が決まった今、鋭意修正に取り組んでいただきたいことがあります。それは反則の多さですね。やむを得ない反則はもちろん仕方ありません。でも、無用の反則というのでしょうか、引き際の判断がレフェリーと合わない反則が目に付き、そこから失点するケースが京産大戦でもありました。ファイトしなければ攻撃をテンポよく継続されますし、ファイトし過ぎるとペナライズされたりしますので、ボール争奪の最前線での判断は正に難しいところだと思います。

ただ、関西のゲームレベルが関東、特に対抗戦と比べて低い以上、関西のチームはチャレンジャーです。レベルの高いチーム相手にチャレンジャーがミスしていては命取りです。同志社に限らず、関西のチームにはレフェリングへの緻密な対応力が求められますね。自ら墓穴を掘って敗者となったチャレンジャーをこれまで山と見てきました。

関西リーグにある罠はこの辺りですね。ゲームの緻密さという点で少し劣るような気がします。ゲームを織物に喩えれば、目がザックリと粗いイメージです。1つのミスが致命傷になるような、シビアなゲームはめったにお目にかかりませんね。特に今季の同志社はスクラムのアドバンテージがありますので、ミスが大事に至らないことがままあります。でも、関西で通用するゲーム運びも関東強豪相手には通用しない、こんな感じの構えでも罰は当たりませんね。くれぐれも関西リーグの罠に嵌らないよう、高度な危機管理を宜しくお願いいたします。



最後に西林君についてひと言です。

おかえんなさい♪

今季の西林君、ここまでディフェンスは本当に素晴らしいのですが、正直なところ攻撃面では開幕後しばらく、昨年のレベル未満だと思ってきました。でも、京産大戦では完全にスピードが戻られましたね。ここに来て、今季のチームに完全にフィットした印象です。今後はさらにプレーの幅を拡げてくれるかも知れませんね。

すんごく楽しみにしています。

もち、他のみんなもね。
もちもち、田辺グラウンドを這う他のメンバーもね。
もちもちもち、サポートするスタッフメンバーもね。


ね!

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category: 観戦レポート

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2013

11/03

Sun.

同志社の歴史的転換と新システム③ 

同志社の歴史的転換と新システム③

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同志社スポーツアトム編集局が選手のインタビューを毎試合レポートしてくれています。インタビュアーの能力に左右される部分はあるのですが、ここ数年は徐々に話の内容が具体的になってきていることにお気付きでしょうか。「同志社らしく・・・」などの抽象的な表現が消え、特に今年の場合は各選手が各ポジション、自分のやるべき仕事を具体的に把握しており、そのために実際のゲームでの課題を個別に、また全体の視野を持って捉えられている様子が伝わってきます。

同志社展開スタイルをトライで実現するプロジェクトに対し、ポジション毎の役割りを忠実に果たすことに加え、個々の特長ある能力をプロジェクトでどう活かすか。一般社会のプロジェクトだとメンバーは期間中、日常生活を含めてワクワクする時間を過ごします。同志社アトムのインタビュー記事からはそのワクワク感が伝わってくるようで、同志社に生まれつつある自主性の証明のように私には見えます。

今回のテーマは「同志社の歴史的転換」です。歴史的転換ですから転換点の前後で劇的な変化があるはずでして、アフターは前回までにご説明申し上げた同志社です。自然発生的な強化システムの存在を感じさせる現在の同志社ですね。ではビフォーの姿はどうしょう。それについてはこの30年、自分なりに感じ取ってきた同志社の歴史を振り返りながらご説明します。



今年はどんなラグビーで行くのか。ラグビースタイルの選択と決定ですね。メンバーの好みと能力、やりたいラグビーとできるラグビーの総合判断で今年のラグビーを導く。おそらく、ラグビーの醍醐味のひとつだと想像します。本来は実際にゲームを楽しみ人たちが一から考え、シーズンに向けて構築するものだと思います。

ただ、基礎プレーの習得時期にある高校生にスタイルの決定は難しそうです。だから、高校ラグビーでは顧問や監督の考えが反映される傾向が強そうです。また、勝利至上主義が当然のトップリーグでは柱となるスタイルがまずあって、個人の能力をそのスタイルにどう活かすかが分析、議論、調整されそうですね。一年は長そうでアッと言う間ですから、一からのスタイル構築は現実問題大きな負担となり勝利至上主義からは不合理です。

少し大袈裟に表現にですがこのラグビースタイルの決定権、学生主導が不文律の理想であった同志社では学生の権利として担保されてきました。そのことは、「こうしたらどうやとは言われるが、こうしろとは言われない」や「同志社では練習メニューまで学生が作っている」などの過去のインタビュー記事から覗えます。

もはや死語ですが以前は伝統的に、早稲田の横の揺さぶり、明治の縦と言われてきました。当時は同志社が関西で唯一彼らと対峙できる関西の雄でしたので、マスコミ誌上で「同志社のスタイルは何か?」が時々話題に上りました。岡先生はその都度、「スタイルのないのが同志社」と応えておられたように思います。ちなみに、同志社を表現した言葉に「自由奔放」がありますが、この辺りが語源になったのかも知れませんね。学生を型にはめることを嫌う、当時の同志社一流のポリシーでした。


ラグビーは学生のものだから、学生がスタイルを考えて決めるのは当然だろう。自分で決めた以上は努力するのが筋だが、その部分も学生に自主性に懸ける。どのようなものであっても結果を引き取るのは学生であって、学生は過程と結果から何かを学んでほしい。

このポリシーをだいたいこのように解釈しています。ラグビーですからこの態度は当たり前だろうと思うですが、現実の大学選手権の覇権争いの中では当時も珍しかったように記憶しています。ラグビーのアマチュアリズムの良さ、それを最大限学生のために活かそうとしたのが同志社だったのでしょうね。それを理想への挑戦と捉えるか、現実軽視の理想家と捉えるかは各立場で勝手に判断すればいいことです。大切なのは、同志社の学生主導に確かな志があったということですね。また、理想と現実は概ね相反するものですが、全盛期の短期間とはいえ、理想が現実の成果を導き出した、理想と現実が一致した時代があったことを特筆しておかなければなりません。


ただ、ラグビー界の変化により、この理想の追求は徐々に困難なものとなります。他のスポーツと比べてアマチュアリズムへのこだわりが強かったラグビー界ですが、1990年代辺りからプロ化への流れが始まります。IRBのプロ化宣言が1995年ですがワールドカップは1987年からスタートしており、ラグビーのプロ化、グローバル化の流れは既に決まっていました。プロは究極の勝利至上主義集団です。世界のラグビー界は飛躍的な競技能力向上の競争時代に入りました。

日本代表の競技能力が世界から大きく離されたのがこの時期です。その危機感を背景に日本でも2003年にジャパン・トップリーグが始まりました。当時の学生ラグビー界に目を向けますと、1997年から関東学院の全盛期が始まっています。その前年まで全盛を誇った明治はその後、徐々に選手権では勝てなくなります。豊富な資金投資を思わせる関東学院の台頭とその後の明治の低迷には、一時代の終焉と新時代の開幕を感じさせられます。優秀な高校生を集めれば勝てる時代の終焉、そこに資金投下がなければ高勝率の維持が難しくなる時代の開幕です。


旧時代を先駆けた同志社でしたが、新時代では先駆けとなりませんでした。そんな中でも部は存続を続け、理想を抱えながら勝つことも求められました。しかし、フルタイム・コーチングの必要性が説かれた時代です。徐々に勝率は低下し続けました。「勝つだけがラグビーじゃない」が口にされ始めたのがこの時期でしょうか。否定できない真理を表していると同時に、安易に使えば弱体化の方便にもなる言葉ですね。、かつては同志社の金看板であった学生主導ですが、皮肉にもその金看板が勝率維持の重荷になりかねない状況を、ラグビー界の環境変化が同志社にもたらしました。


気の毒だったのは大西主将時代以後の2年間、特に2年目ですね。私が田辺にお邪魔するようになったのがこの年ですが、学生主導が孤立化しているような印象を受けました。このような表現は批判を受けるかも知れませんが、壮大な完全学生主導の実験がラグビー部崩壊の危機をもたらしたような印象を持ちました。

自信があり、実際に強かった大西主将時でも国立準決勝では関東学院に敗れました。私など能天気なファンは水間・大西2代の強化でそれなりに満足でしたが、残ったAチームメンバーはショックだったろうと想像します。フルタイム監督の必要性が説かれ、実際に他校は成果をあげていた時代です。自分たちは当然勝ちたいし、周囲からは勝てと言われるものの、完全学生主導に限界があることは自分たちが一番よく分かっている。あの2年間、学生が迷走したイメージですが、社会経験の乏しい学生が孤立感を深め、出口を見失った結果の行動に見えなくもありません。当時の学生が100%悪いとするのは問題の本質を見誤る態度のように思えます。


同志社崩壊の危機を救われたのは中尾元監督でした。当時、学生主導が理想からかけ離れ、学生勝手になっていたところに管理を導入し、生活面での自由を制限されました。また、同志社初のフルタイムコーチです。練習指導権を学生からコーチに移行され、「同志社は練習メニューまで学生が考えている状態ですから・・・」の状態は解消されたと思います。もちろん、中尾さんおひとりが頑張られたわけではなく、当時は中尾さんを中心にして、同志社立て直しの気運が高まった時期だったように記憶します。寮の建設やグラウンドの人工芝化など、成果の陰には多くの方々の貢献がありましたし、ファンクラブの果たした役割りも大きかったと思います。

練習と自己管理の一部を学生主導から監督側に移行された中尾監督でしたが、ラグビースタイルの決定権は学生主導に残されました。中尾監督期の後期は分かりませんが、少なくとも前期は戦術面に口出しをされなかったと聞いています。学生を全面的に管理下に置くのではなく、ラグビーを造る醍醐味の部分に自主性を残されたということですね。急激な全面的管理は学生に受け容れ難いことでしょうし、ご存命であった岡先生の影響力も想像されますが、この判断は中尾監督の信条に基づくものだと思います。

全体をAスコッド、Bスコッドに分け、基礎練習の徹底を図られました。コーチングに飢えていた前半期のメンバーには、むしろそれが新鮮だったのでしょう。有能な選手を多数擁したこともあり、方針は好循環、好結果につながりました。ただ、後半期はその方針がマンネリを招いたでしょうか。さまざまな要因が組み合わさっての結果だと思いますが、最終的には関西でも勝率が下がり始めました。

結果が出ている間はいいですが、勝てなくなると同志社の場合、指導者への風当たりが学生以外からもきつくなりそうです。基礎練習の繰り返しや生活管理への不満が学生のみならず、周辺からも顕在化したかも知れませんね。後半期は年々監督が孤独感を深められるようで、気がかりでした。責任者なので強い風当たりは当然のこと。正論なのは重々承知ですが、完全学生主導末期の学生たちといい、中尾監督機期の末期といい、同志社ではどうして、真ん中にいる人間が孤立化する印象があるのか。どこか体質的めいたものを感じて、当時は良い気分ではありませんでした。

中尾監督期に学生の気質が劇的に変化したことが、その後の同志社を強く下支えしています。宮本前監督や山神監督、他のOBの方とお話させていただいく機会に恵まれる際、誰もが口を揃えて仰るのが「今の学生は本当に真面目で、よく練習する」ということです。時には「真面目すぎると思うくらい」と表現されることもあります。同志社崩壊の危機にあったころを思うと、学生の気質どころではなく、部の文化が変わった気がします。先日の関学戦では先方の選手のヤンチャぶりが目立ちました。当時の同志社のゲームマナーは非常に挑発的で、あの比ではなかったと思います。


中尾監督の後、宮本監督が1つのラグビースタイルを同志社に導入されることになります。おそらくこの「1つのラグビースタイルの導入」については議論を経ていないのでしょうね。完全学生主導理想との軋轢を見ることなくスムーズに移行、山神監督期に入った今年は自然発生的な強化システムが同志社に生まれ、学生の自発的な部内競争を導く成功を収めています。この一連の流れを学生主導の歴史で捉えますと、中尾監督期に完全学生主導の一角が崩れ、宮本監督が残りの柱、ラグビースタイルの決定権を取り外されたことで、完全学生主導が崩壊したように見えます。

見事な、まるで魔法のような様変わりですがそれはそれとして、あれほどこだわった学生主導の理想はどこへ行ったのでしょう。誰も何も言わないので、端からそんなものはなかったかのようです。今の状況に眉をひそめる人はいないのでしょうか。何の総括も聞かれないのは、少なからず違和感に近い寂しさを覚えます。


時代は中尾監督期の前期からさらに進んで、栄養管理を含めた科学的トレーニングによる競技能力向上が、高勝率維持の前提時代に入りました。かつての完全学生主導や中尾監督期の一部学生主導に戻ることは、大学選手権制覇はもちろん、国立進出をも放棄することに近いことだと思います。もちろん、それらの考え方はが悪いのではありません。むしろ、ラグビーを楽しむ人間にとっては当然の考え方だと思いますし、同志社がもしその方針を貫くなら、堂々と歩むことがひとつの主義となり得ます。

ただ、今後ますます大学ラグビーの環境はシビアになり、その方針が高勝率とは相容れなくなるのは間違いないはずで、そこに敢えて好成績を要求するのは矛盾というか、無責任な態度だと思います。信じる理念や哲学があるなら、同好会と揶揄されようと「その道もいいな」と思ってきました。また、逆に学生が全国で勝ちたいと言うのなら、一朝一夕で済まないマジで大変な道ですが、かつて新島襄が歩んだ道を想起しないでもありません。それもいいなと思ってきました。

ただ、学生が勝ちたいと思い、周囲が勝ってほしいと願う力がはたらく限り、おそらくもう後戻りはできないでしょうね。中尾監督、宮本監督、山神監督と続いた同志社の過渡期ともいうべきこの10年。これらの優秀な監督を迎えることができて、同志社は本当に幸いでした。中尾監督が学生主導に敢えて踏み込まれて部の練習文化を軌道修正、そこに宮本監督が同志社展開スタイルを導入され練習の目標を明確化、さらに現在の山神監督の下では、同志社展開スタイル追究を軸に学生・指導陣の資源の好循環システムが生まれつつあります。


同志社はやはり、学生主導!だよん。

新しく、時代に合った学生主導を開拓してほしいですね。たとえかつての学生主導が歴史の1ページとなっても、そのページを読み込めばそこに込められた哲学、それを唱えられた人々が学生に託された思いは読み取れます。学生主導の形は時代や環境に合わせて変わり得るものですが、学生主導に懸ける人々の思いは時代を超えて普遍的です。

・学生は勝ちたい。
・指導陣は勝たせたい。
・同志社世論は同志社の強弱にしか興味がない。

要するに誰もが強い同志社を願っているんですね。であれば欲望を剥き出しに、形振り構わず強化を模索すればいいですね。「勝ち負けだけがラグビーじゃない」はしばらく封印し、再び大学選手権を制覇する時に口にして、敗者を歯噛みさせれば良いです。全盛期の同志社がそうだったように。

帝京-早稲田戦は見事でした。競技能力が他大学の学生を超えている帝京、そしてその帝京を相手にあれだけレベルの高い好ゲームを作ってみせた早稲田。両者は立派だと思います。勝つという欲望に忠実な一方で、勝つための手順は知的に科学的に追究していますね。選手個々の競技能力の向上という、現代ラグビーの本質と謙虚に向き合っています。余談ですが、筑波もおそらく継続して向き合っていますね。立命などは向き合い始めたチームのひとつでしょうか。ただ、時間がかかる粘り腰のプロジェクトなので、緒についたチームには継続力、構想力が問われますね。

早稲田や筑波の競技能力から伝わってくるのは、帝京を追う強い意志です。同志社が本気で競技能力を上げ、安定的に高勝率を目指すならば、選手や指導陣以外の、現場を支える組織力の構築は避けて通れません。大学主導の強化は同志社の場合、期待できないでしょうね。となれば、勝ちたい、勝たせたい、強い同志社が好きの人間たちが強化の主体になるしかありませんね。大学のサポート力は大きいですが、大学が遅れ馳せで参加せざるを得なくなる状況、大学にサポートしたいと思わせる説得力を生むことが必要で、できるできないの事前議論抜きにまずはその主体造りをスタートさせることですね。

では、そのリーダーシップを誰が執るのか。

かつての完全学生主導は本当の意味での学生主導ではなく、周囲から与えられた学生主導でした。いわば箱入り娘的な学生主導、内々で完結する内向きの学生主導であったと思います。

同志社の展開スタイルをより高いレベルで追究し、安定した高勝率を目指すことは即ち、入部した学生の競技能力を上げる取り組みとの戦いです。そのためにはその道筋と構想、予算の全体像を描き、それを基に学内外の協力を仰ぐことも必要となるでしょう。

この外向きの戦いが新たな学生主導になれば良いですね。周囲の大人たちが学生のために何かを用意する発想から抜け出し、周囲の大人たちの協力を取り込みながら、学生自身が主導的に必要な資源を同志社展開スタイルの追究に投入するイメージですね。かつて新島襄が同志社を興したことに通じる、すこぶる同志社らしい学生主導です。成功するか、失敗するかなんてことを考える必要はありません。学生は成功させることだけを考えればいい。学生だから許される、そして学生に自主性の願いを懸け続けた同志社だからこそ許される学生主導です。


「先頭に立つイメージではなく、みんなの真ん中にいるキャプテンでいたい」

秋山君がこのようなことを仰ったそうです。それを聞いた時、心の豊かさと知恵の深さを覗わせる言葉だと感心しました。同志社が本当に大学ラグビー界の先頭集団を追撃するのであれば、学生は従来のように周囲がお膳立てしてくれるのを待つのではなく、学生がみんなの真ん中にいて、同志社と同志社を取り巻く資源を強化に活用する形を模索してほしいと思います。

(了)



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Posted on 12:52 [edit]

category: 同志社ラグビー

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